行政改革大綱
第1 行政改革の基本的な考え方
1. 行政改革大綱策定の必要性
宮古島市は旧平良市、旧城辺町、旧伊良部町、旧下地町、旧上野村が地方分権の進展や少子・高齢化社会の到来といった社会環境の変化に加え、住民の生活様式の多様化に伴う生活圏の拡大と行政ニーズへの対応、国の三位一体の改革に伴う財政の硬直化など多くの課題に直面し、個々の市町村ではその対応に限界があることから、こうした状況を打開すべく5市町村が特性を生かしながら、力を合わせて総合的にこれらの課題に対応し、今後の地域の活性化を図ることを目的に、平成17年10月1日に合併し誕生しました。
もちろん、合併したからといってこれらの諸問題が解決するわけではありません。新市の厳しい財政事情や多様化する住民の行政ニーズへの対応など改善しなければならない課題は山積しており、むしろこれからが改革の本番であることは言うまでもありません。
これまでも旧5市町村では行財政改革大綱を策定し、取り組みを行ってきたところではありますが、宮古島市においては、マスタープランと位置づけた「新しい島づくり計画」を踏まえて、その将来像「こころつなぐ 結いの島 宮古 ~みんなでつくる 元気で誇れる島づくり~」へ向けて、なお一層思い切った改革の断行が求められます。
2. 行政改革の基本的方向
「最小の経費で最大の効果を上げる」という地方自治運営の基本原則を踏まえ、サービス精神と経営感覚に立脚した行政改革を行うとともに、市民の義務と権利および責任のもと行政へも積極的な参画を図り、より効率的かつ実効性のある改革を行うため、次に掲げる2つの柱に体系化し推進していきます。
(1)行政運営体制の確立
様々な社会環境の変化や景気が低迷する中、行政需要は拡大・高度 化するとともに財政事情も深刻なものがあり、行政を取り巻く環境は ますます厳しくなっています。
このような状況のもと、行政ニーズに適切に対応し、市民福祉の向上を図っていくためには行政情報を積極的に市民に提供し、市民の声を十分に把握することに努めるとともに、行政としての効率性を高め、長期的な視野に立って行財政基盤を強化するための行政運営体制の確立が急務であります。
そこで、次に掲げる事項について積極的に取り組みます。
- 行政の透明性の確保
- 情報通信技術による事務の効率化および市民サービスの向上
- 組織・機構の整備
- 定員管理と給与の適正化
- 人材育成の推進
(2)財政運営の健全化
本市の財政状況は、合併時における財政シミュレーションで示したとおり、合併後の5カ年間は赤字経営を余儀なくされ、その後黒字に転ずると予測されていますが、実際の財政事情は合併前に予測した数値より悪化しており、危機的な状況であります。
さらに、国の三位一体の改革や地方との役割分担の見直しによる負担増など、今後の地方財政を取り巻く環境はますます厳しいものが予測されます。
このようなことから、自主財源の確保に努めるとともに、公債費の縮減や歳出の適正執行など徹底した経費節減を行い、健全な財政基盤を構築する必要があります。
そこで、次に掲げる事項について積極的に取り組みます。
- 自主財源の確保
- 歳出の適正執行
- 経営的視点による効率的運営
第2 行政改革の実施期間および進行管理
1. 行政改革の実施期間
行政改革の実施期間は、平成18年度から平成26年度までの9カ年間とします。
2. 行政改革の進行管理
行政改革を計画的かつ着実に実施していくため、大綱の策定と併せて改革の具体的な実施項目や数値目標等を定めた実施計画を策定します。
大綱や実施計画の推進にあたっては、市民の代表等からなる行政改革推進委員会の提言を踏まえ、市長を本部長とする行政改革推進本部が中心となり、各支所を含む全庁的体制で取り組みます。
また、行政改革の実施状況については、広く市民に公表していきます。
第3 行政改革の具体的施策
1. 行政運営体制の確立
(1)行政の透明性の確保
行政の透明性を確保し、市民に開かれた市民主体の行政運営を行うため、平成17年10月1日に公布された宮古島市の情報公開制度、個人情報保護制度および行政手続制度等の適正な運用を推進するとともに、バランスシート等わかりやすい財政状況の説明資料の作成や行政評価制度の導入を図ります。
また、市民の意見を広く行政に反映させていくため、広報・広聴機能の拡充を推進します。
1.バランスシート等の作成
「市民にわかりやすい市政経営」を目指して、バランスシート (貸借対照表)等を作成し、市の財政状況をわかりやすく市民に伝えていきます。
2.行政評価制度の導入
市が実施する政策、施策および事業の有効性、効率性の向上並び に職員の政策形成能力の向上を図るとともに、行政の透明性を高め、市民の行政に対する理解の促進および信頼の確保に資するため、行政評価制度を導入します。
3.情報公開制度の充実
情報公開制度、個人情報保護制度に基づき、個人の知る権利を保障するとともに、個人のプライバシーにも最大限に配慮し、制度の趣旨に沿った運用の充実を推進します。
4.行政手続きの簡略化
行政手続法の趣旨を踏まえた手続きの公平性と透明性を確保するため、各種申請、許認可等の手続きについては、様式の簡略化や市民のわかりやすい事務手続き等適正な制度の運用を推進します。
5.広報・広聴機能の拡充
市民の意見を広く行政に反映させるとともに、行政に対する市民の理解と認識を一層深めてもらうため、効率的かつ効果的な行政情報の提供を推進します。
(2)情報通信技術による事務効率および市民サービスの向上
近年、情報化の進展は著しいものがあり、だれもがインターネットを活用し、多様なサービスや情報提供を受けることが容易になりつつあります。そこで、市民に質の高い行政サービスを迅速かつ的確に提供するとともに、行政事務の効率化・省略化を推進するため、情報通信技術の活用に積極的に取り組みます。
1.電子自治体の整備
電子自治体を構築し、インターネット利用による多様な電子窓口サービスや行政情報の提供等を推進します。
2.総合行政情報システムの整備
全庁的な総合行政情報システムの高度化を進め、行政事務の効率化・省力化を推進します。
3.事務事業の総点検・見直し
簡素にして効率的な事務処理と職員の改善意欲の向上のため、支所を含む全庁で「事務事業の総点検運動」を実施し、事務事業のあり方、整理合理化、各種計画の策定・見直し等を行い、事務事業の簡素化・効率化・迅速化を推進します。
4.事務処理の一元化および窓口サービスの充実
事務処理の効率化・迅速化および市民サービスの向上を図るため類似又は関連事務については極力一つの部署で受け付け、処理ができるよう一元化を推進します。
(3)組織・機構の整備
本市は5市町村の対等合併により誕生し、合併による住民の不安感の解消と住民サービスの低下を防ぐため、分庁方式を採用した組織・機構の編成がなされております。組織・機構は社会の経済情勢や多様な市民ニーズの変化に応じて、事務事業をもっとも効率的かつ効果的に執行できるよう編成することが重要といえます。
今後とも、新たな行政課題や市民ニーズに、弾力的に対応できるような組織・機構の整備を早急に推進します。
1.行政組織の見直し
市民にわかりやすく利用しやすい組織・機構の編成を図るとともに、現在の組織の規模、業務内容や業務量と人員配置などを検証し、スクラップ・アンド・ビルドを基本に、柔軟性や効率性を重視した執行体制を確立を目指します。
2.市議会等の組織・運営の合理化
市議会や各種委員会においても組織・運営の合理化を図るなど、行政改革を推進されるよう協力をお願いしていきます。
(4)定員管理と給与の適正化
定員管理については、組織・機構の見直しとともに、新市建設計画で示された職員の削減計画を踏まえ、定員管理計画を策定し対応します。
また、臨時雇用職員の抑制や市民サービスを踏まえた民間活力を促す観点から各種事業の民間委託、諸施設等の指定管理制度の導入を行い、OA化を推進し、大幅な定員の削減と省力化を図ります。
また、人事の活性化を図るため、適正な人事異動方針を確立するとともに、職員の年齢構成の平準化や退職者の長期的見通しなどを踏まえた人事管理の体制を確立します。
職員の給与については、職務と責任に応じた給与原則、国や県の状況および他の市との比較、人事委員会の勧告制度などを踏まえた官民格差の是正など、その内容水準において市民の理解が得られるよう努めます。
1.定員管理の適正化
組織・機構のスクラップ・アンド・ビルドを基本に、適正かつ計画的な定員管理を行うため、適正化目標を掲げた「定員適正化計画」を策定します。
2.給与の適正化
給与については、国や県および他市の給与水準を踏まえながら、職務と責任の度合いに応じた給与体系を保持し、給与体制の適正な運用を図ります。また、各種手当についても、改善や見直しを行い、市民の理解が得られるよう努めます。
(5)人材育成の推進
社会環境の著しい変化や、多種・多様化する市民の行政ニーズに的確に対応するため、政策形成能力や創造的能力を有する人材の育成が求められています。
そこで、時代を担う質の高い意欲ある人材を育成するため、職員研修を計画的に実施し、職員の意欲と士気の高揚を図るとともに、能力・実績を重視した新しい人事評価システムの導入や職員提案制度を取り入れ、効果的な業務の改善を推進します。
1.職員の能力開発
市民の負託に応えうる能力ある人材を育成するため、計画的・体系的研修や職場研修に加え、自己啓発のための自主研究グループの育成を推進します。
2.人事評価システムの導入
昇格・昇級の適切な運用について、能力・実績を重視した新しい人事評価システムの導入が求められており、公正かつ客観的な人事評価システムの構築に積極的に取り組みます。
3.職員提案制度の創設
職員提案制度を創設することにより、職員の提案意欲を 喚起し、効率的・効果的な業務の改善を推進します。
2. 財政運営の健全化
(1)自主財源の確保
地方分権の推進、少子・高齢化社会の到来、社会経済情勢の変化に加え、合併に伴う行政ニーズの多様化など、財政を取り巻く状況はますます厳しくなっています。
このような厳しい財政状況のもと、計画的な行財政運営は不可欠の課題であり、財源をより安定的に確保することは最重要事項であり、自主財源の確保はその主要なものといえます。
そこで、市税等の徴収率向上、使用料・手数料の見直し、および公有財産の有効活用など、より徹底した自主財源の確保の推進を行うとともに新たな財源の確保を図るため、家庭ゴミ収集の有料化、市の印刷物への広告掲載や法定外税の導入等、広角的な視野で財源の新設・確保を図ります。
1.市税等の徴収率向上
市税は、自主財源の根幹をなす貴重な財源ですが、合併により一部地域での徴収体制が変更になるため、その地域での徴収率の低下が懸念されます。
このようななか、課税客体の適正な把握と自主納付の向上を図り、公平・公正な課税のもと、市税の徴収率の向上を図るとともに、滞納者への徴収対策の強化に努めます。
また、国保税、農業関係負担金、市営住宅使用料などについ ても滞納者への徴収対策の強化も含め収納率の向上に向け取り組みます。
2.使用料・手数料の見直し
使用料および手数料については、受益者負担や市民の公平性を確保する観点から、諸物価や管理運営経費など行政コストを勘案しながら定期的に見直しを行い、その適正化を図ります。
3.公有地の売却等
公有地については、自主財源の確保等の観点から、利用状況や賃貸借について検証し、見直しや売却などを検討してまいります。
特に、トゥリバー地区等の売却については、最重要課題として位置づけ、積極的に推進してまいります。
4.家庭ゴミの有料化と減量化の推進
現在、事業系ゴミは有料化されていますが、一般家庭の ゴミは無料であることから、負担の公平性を確保し、減量化を促進するためにも家庭ゴミの有料化を図ります。
5.新たな財源の開拓
発想の転換のもとで、財源の創設を図ることは重要な課題であり、市の印刷物のスペース等に企業の広告を掲載したり、法定外税を導入するなど新たな財源の確保に努めます。
(2)歳出の適正執行
景気が低迷し、厳しい財政運営を余儀なくされている状況下にあって、限られた財源を適正に運用し、新たな行政課題や拡大する行政需 要に的確に対応していくためには、徹底した職員のコスト意識を図り、歳出の適正な執行に努める必要があります。
合併の効果を上げるためにも、市民のニーズにあった財政運営を推進します。
1.補助金・負担金の見直し
補助金・負担金については、その必要性、費用対効果、経費負担のあり方について検証し、廃止・縮減も視野に入れて適正化を図ります。
2.経常経費の抑制
経常経費については、毎年度の予算編成を通して経費の節減に努めてきましたが、さらに行政効果や必要性を十分精査し、より一層経費の節減に努めます。
3.行政委託・諸制度の見直し
現在行われている委託業務については、その必要性などを含めて検証し、効率性を高めます。
また、これまで行ってきた行政連絡員制度など諸制度についても思い切った見直しを行い、経費の節減を図ります。
4.公共工事のコスト縮減
公共工事については、合併時に合意した「新しい島づくり計画」に基づき新市の基盤づくりを進めることになりますが、徹底した職員のコスト意識を促すとともに、公共工事のコスト縮減に努めます。
(3)経営的視点による効率的な行財政運営
財政運営の健全化を図り、より質の高い市民サービスを提供していくためには、地域住民と行政が連携した地域協働の推進、費用対効果などの経営的視点を取り入れた効率的かつ効果的な行財政運営が求められています。
また、公共施設については、廃止も含めた整理・統合を行う等、集中改革プランを策定し、PFI手法の活用や指定管理者制度を積極的に導入するなど、民間への委託可能な事業を検証し、可能なものは民間への委託を促進します。
上下水道事業や外郭団体については、設立の趣旨を踏まえ、公益事業としての経営的視点から効率的な管理運営に努めます。
1.地域協働の推進
地域の課題への取り組みや地域活動に住民が積極的に参加することを推進するため、自治会・コミュニティー組織の設置や自治会活動への支援などを積極的に行い、行政との連携・協力を図るなど地域協働を実践していきます。
また、直接市民が行政に提案できる仕組みづくりを進めてまいります。
2.民間委託の推進
民間委託の推進は、市民サービスの維持向上を図るため、市の適正な管理・監督の下に行政責任の確保などに留意して推進します。また、ボランティア団体やNPO法人等との協働関係を構築するよう努めます。
3.公共施設の効率的運営
公共施設の運営については、市民の利便性や集客力を高めるとともに、施設の集約化や複合化を進め、維持管理費の節減に努めます。また、指定管理者制度を積極的に導入し、多様化する市民ニーズに効果的、効率的に対応してまいります。
4.上水道事業の合理的な経営の推進
上水道事業については企業経営の合理的な運営を図る観点から、より一層経営の健全化に努めます。
5.下水道事業等の経営の健全化
公共下水道事業、農漁業集落排水事業については地下水保全の観点から導入されましたが、加入世帯が少なく経営が困難な状況です。島の人々の飲み水を守る意味でも加入者の促進を図り、経営の健全化を目指します。
6.外郭団体の運営の健全化
公共施設管理公社等については、社会情勢の変化等に伴い、改めて市との役割分担の明確化、設立の目的に沿った事業運営を確認し、効率的かつ健全な運営による自立化を促進します。